傍目八目

日々の思いをつらつらと

吉原幸子さんの詩


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原幸子さん(1932~2002)

東大を卒業後、劇団四季へ。

女優として活躍後、詩を書き始める。

 

胸に突き刺さる詩。

強くて、格好よくて、対象をしっかり見つめて、言葉にする。

一度読んでみると、忘れられなくなる詩。

 

晩年はパーキンソン病を患っていたようですが、亡くなる前に谷川俊太郎さんが見舞いに行った際の様子を文章にしてありまして、

透き通るような白い肌をしていて、しかし、そこに立つ人が谷川俊太郎さんであるとは認識していないようだったとあり、胸に迫ります。

 

沢山の詩がありますが、

死についても、随分触れていて、

人間は、いつか死ぬのだ、それは避けられないこと、、最後まで自分自身でいたいと、

私は強く思ったものですが。

 


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詩集の裏表紙より。晩年の写真ですね。


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若い頃の写真。wikipediaより。


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虚飾を排した純粋な語法とリズムで人間の愛と孤独の倫理を歌い続けたと、裏表紙にありますが、、飾らない言葉で綴られた詩なので心に響くのかもしれません。

 

若い時から、死について考えていたのではないかなと。親の死、兄の死、、作者は末っ子のようですから、、送る経験が多かったのかもしれません。

 

子供達も、物心ついた時の身内の死は生涯忘れないものらしいですから。

 

 

 

   「塔」

 

 

あの人たちにとって

愛とは 満ち足りることなのに

 

わたしにとって

それは 決して満ち足りないと

気づくことなのだった

 

〈安心しきった顔〉

を みにくいと

片っぱしから あなたは崩す

  ―――崩れるまへの かすかなゆらぎを

  おそれを いつもなぎはらふやうに――

あなたは正しいのだ きっと

塔ができたとき わたしに

すべては 終りなのだから

 

ああ こんなにしたしいものたちと

うまくいってしまうのはいや

陽ざしだとか 音楽だとか 海だとか

安心して

愛さなくなってしまふのは苦しい

 

崩れてゆく幻 こそが

ふたたび わたしを捉へはじめる

ふたたび

わたしは 叫びはじめる

 

         詩集〈オンディーヌ〉より

 

原幸子さんは一度結婚して、男の子を出産もするのですが、離婚しています。

 

若い頃からショートヘアで、美人ですが、ボーイッシュで中性的な魅力があります。

女性に人気があったのも分かるような。

 

 

 

     「あのひと」

                             吉原幸子


あのひとは 生きてゐました

あのひとは そこにゐました

ついきのふ ついきのふまで

そこにゐて 笑ってゐました

 

あのひとは 生きてゐました

さばのみそ煮 かぼちゃの煮つけ

おいしいね おいしいねと言って

そこにゐて 食べてゐました


あたしのゑくぼを 見るたび

かはいいね かはいいねと言って

あったかいてのひら さしだし

ぎゅっとにぎって ゐました


あのひとの 見た夕焼け

あのひとの きいた海鳴り

あのひとの 恋の思ひ出

あのひとは 生きてゐました

あのひとは 生きてゐました

 

 

あのひととは、きっと作者のお母さんではないかと私は感じています。

切なくなる詩です。この詩を読むと、人間の寿命などを考えて眠れなくなります。

 

🌸🌸🌸🌸🌸

 

明日は、気温が上がるようです。

12℃くらいにはなるそうで、この時期とすると珍しい暖かさ、、明日は何しようかな。